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軽自動車の後部安全性の危惧



 日本における自動車市場で急速な伸びを見せている軽自動車ですが、普及すればするほど私どもが懸念する問題が大きくなっていきます。


 あくまでも自動車の補助的な位置付けとして制度設計されている軽自動車ではありますが、装備はすでに普通の車と引けを取らず、セカンドカーとしてではなくメインカーとして耐えうるニーズが高まるとともにそれらの差がなくなりつつあるのは周知の事実です。


 当初想定されてきたものと変わってしまい、その存在のいびつさが鮮明となってきたために税制の問題提起もされるようになってしまいましたが、やはり規格、構造上、安全性の担保には限界があるように思われ、その点の根本的見直しは全く議論されず、メーカー任せになっているのが実情です。

 私どもが一番危惧するのは「後部衝突(追突など)の際の後部乗員の安全性」です。


 ハイトワゴン、スーパーハイトワゴンに代表されるように、軽自動車のアキレス腱と思われていた「後部乗員の快適性の向上」はリアシート位置をさらに後部へ移動させることによって足元空間を広げて確保しました。現在発売されているそれらの多くは同じ手法を使っています。いや、限られた規格の中では使わざるを得ないと言ってよいでしょう。


 今回のモーターショー(2013)でも確認してまいりましたが、その傾向がどんどんエスカレートしています。


 リアシートにもリクライニング機能は設けられていますが、完全に背もたれを倒せるわけではないものの微調整が可能となり、快適性を向上させています。実際に私も着座してきましたが、普通車と遜色ないレベルのシート機能でした。


 しかし、可倒範囲いっぱいに倒すと、快適ではあるものの、頭部ヘッドレストとテールゲート(ハイトワゴン系の場合はちょうどリアガラスの位置)のクリアランスが15cm程しかないものがほとんどでした。以前、普通車の3列シートの3列目の安全性を別の場で指摘したことがありましたが、それよりも危険であると感じます。


 一応、リアの車軸を最大限後部に移動させてホイルベースを稼ぐ(衝突時にそれ以上食い込ませない)仕様が一般的になっているものの、元々乗員保護のためのクラッシャブルゾーンがほとんど存在しない軽自動車の後部は衝突時の衝撃を後部乗員がそのまま受けてしまうということになります。


 つまり、全面が比較定平坦な形状の車両(ハイエースやトラックなどのような)に追突された場合、オフセットが無くてもすぐに後部乗員の頭部に損傷が及ぶということになります。


 後部強度材の位置が同じ(軽自動車や車高が低めの車両)であれば上手くプラットフォームで衝撃を分散できるかも知れませんが、第一の砦である骨格としてのリアクロスメンバー(ない車が多い)、リアサイドメンバーの位置が違う車同士であれば、今の「前方衝突の安全が第一」のクルマ作りでは衝突した側の車が守られるという何とも皮肉な結果となります。


 私どもは「小さい車だからこそ」早急に安全性を担保する規格、基準が必要だと考えます。


 軽い衝突でも、ぶつかり方によっては後部乗員に致命的なものとなるはずです。


 例えば、テールゲートとそれを支えるルーフ後部からピラーエンドを一体として「骨格」と位置付ける、普通車以上の強度を持ったリアクロスメンバーを義務付ける、もしくはやはり「規格の拡大」が必須であると思います。

 将来、センシング技術によって「ぶつからない車」が普及するかもしれません。しかし現状の技術精度を鑑みるにそれには10年単位の時間を要するはずです。


 一旦、快適な車となった以上、リクライニングを禁止したり、後部座席位置を前方にする規制は考えられないでしょう。ならばやはり車体側の早急な対策が必要です。


 安全性と「軽だから」という認識はトレードオフの関係にはありません。すでに車体の価格も普通車の小型車を超える軽自動車も多く発売されています。単に「維持費が安いから」「様々な技術を使って小さいのだから」高くてもいい、という姿勢も通用しないでしょう。


 追突の多くはぶつかった側が100%の過失を問われる場合が多いですが、だからと言って開発において軽視してよいはずはありません。しかし車を見る限り、そう感じてしまうのは私共だけでしょうか。


 軽自動車は日本を代表する技術の粋を集めた製品です。その進化においてもふんだんに技術が投入されてきました。燃費、快適、前方や側面の安全技術だけではなく、「後部」にもそれらを注ぐべきです。


 これは3列シート車にも言えます。






             
2013.12.3
一般社団法人自動車生活総合研究所
(尾作)
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